ここでは、専門記述試験対策のおすすめ参考書について紹介します。
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はじめに
専門記述試験
国家総合職や裁判所事務官、財務専門官、国税専門官といった国家公務員試験や、東京都などの地方上級試験のごく一部の試験では、専門科目の試験において、択一式の試験とは別に、記述式の試験が課されています(※東京都では、専門科目の試験は記述式試験のみで、択一式試験は課されていません)。
記述式試験対策の難易度は、択一式試験の比ではありません。択一式の試験では、あいまいな知識でも、選択肢の比較などから正答することも可能ですし、当てずっぽうで選択肢を選んだとしても、正答する可能性があります。
対して、記述式の試験では、あいまいな知識は何ら役に立ちません。正確な知識に基づき、必要なキーワードを的確に使って解答しなければ、合格に必要な得点は得られません。
このように、専門記述試験は、どれだけ対策をしたかによって、受験生の間で出来不出来に差の出やすい試験であるといえます。
おすすめの参考書は?
専門科目の記述式試験で高得点を取るために、しっかりと対策を立てたいところですが、残念ながら、公務員試験における専門記述試験対策に特化した参考書というのは、ほとんど出版されていないのが現状です。
数少ない専門記述式試験対策の参考書の中から、おすすめの参考書について、このページでは紹介します。
憲法
- 該当する主な職種
- 国家総合職
- 裁判所事務官(総合職・一般職)
- 衆・参議院事務局(総合職・一般職)
- 国立国会図書館(総合職・一般職)
- 財務専門官
- 国税専門官
- 都庁(一般方式)
ご覧のように専門記述試験を課される公務員試験ならば、どの職種においても必ず課されているのが、憲法です(必答ではなく、選択の場合もあります)。
憲法はこのように重要な科目であり選択する受験生も多いので、しっかりと対策したいところです。
公務員試験 論文答案集 専門記述 憲法
かつては、Wセミナーから出版されていたGUTSシリーズの「専門記述憲法」が憲法の記述対策では、唯一の選択肢という評価を受けていました。しかしながら、Wセミナーの経営不振もあり、GUTSシリーズは長らく絶版となっており入手が困難でした。そして何よりも、内容が古くなっている感は否めませんでした。
そんな中、新シリーズとして版元をTACに変え、満を持して出版されたのが、本書です。
誤植が見られるものの、公務員試験のあらゆる職種に対応するよう、豊富な過去問及びオリジナル問題が収められています。
公務員試験レベルに関する限り、本書で網羅されているテーマをしっかりと学習すれば、憲法の記述試験対策としては、十分といえる内容に仕上がっています。
民法
- 該当する主な職種
- 国家総合職
- 裁判所事務官(総合職)
- 衆・参議院事務局(総合職)
- 国立国会図書館(総合職・一般職)
- 財務専門官
- 国税専門官
- 都庁(一般方式)
民法は、法学部出身であるとか、法律系の科目が得意な場合に選択することになると思います。
民法を選択するという受験生には、下記の参考書を、おすすめします。
公務員試験 専門記述式 民法・行政法 答案完成ゼミ
公務員試験用の民法の記述試験対策の参考書というと、現状では本書しかありません。
本書はタイトルから分かる通り、「民法」と「行政法」の論点が1冊に収録されています。
そのため、論点の数から言って本書だけで「民法」の記述試験対策を行うのは、不十分です。
そこで、司法試験対策用ではありますが、「伊藤塾試験対策問題集:論文〈3〉民法」も併せて紹介しておきます。
行政法
- 該当する主な職種
- 国家総合職
- 衆・参議院事務局(総合職・一般職)
- 国立国会図書館(総合職・一般職)
- 都庁(一般方式)
行政法は、とっつきにくい科目であることもあり、選択する受験生はそれほど多くありません。
ですので、しっかりと対策することで、他の受験生に大きく差をつけることができる科目であると言えます。
公務員試験 論文答案集 専門記述 行政法
憲法でのおすすめ参考書と同シリーズの行政法版です。
そのため、おすすめ理由は、憲法版に準じます。
憲法版同様、公務員試験のあらゆる職種に対応するよう、豊富な過去問及びオリジナル問題が収められています。
公務員試験レベルに関する限り、本書で網羅されているテーマをしっかりと学習すれば、行政法の記述試験対策としては、十分といえる内容に仕上がっています。
経済学
- 該当する主な職種
- 国家総合職
- 衆・参議院事務局(総合職・一般職)
- 国立国会図書館(総合職・一般職)
- 財務専門官
- 国税専門官
- 都庁(一般方式)
経済学は、憲法の次に、選択者が多い科目なのではないでしょうか。
そのため、参考書も他の科目に比べれば充実しています(それでも少ないですが)。
試験対応 らくらくミクロ・マクロ経済学入門(記述・論文編)
内容に関しては、よくまとまっており、このレベルの解答を試験本番で書くことができれば、合格に必要な点数は十分に稼げます(国家総合職を除く)。
ただし、本書には欠点もあります。それは、解答例によって、字数に大きくばらつきがあるということです。
専門記述で求められる解答の字数は多くの場合、800字程度もしくは1200字程度であると言われています。
それが、本書では、解答例によって、400字程度~2000字程度と字数に大きくばらつきがあるのです。
400字程度では、必要とされる分量に足りませんし、2000字程度では、明らかに字数が多すぎます。
字数が少なければ、合格に必要な点数は得られません。字数が多すぎる場合は、そもそも、解答欄に書ききれませんし、何よりもそんな分量を書いている時間がありません。
ですから、各解答例について、各自で800字程度、もしくは1200字程度の解答にまとめ直すという作業が必要になります。
そうした作業ができるならば、本書をおすすめします。
試験攻略 新・経済学入門塾〈5〉論文マスター編
こちらは、上記の本よりも、内容がやや高度となっているため、国家総合職を目指す受験生以外は、上記の本で対策すれば、十分です。
逆に言えば、国家総合職を目指しているならば、こちらの本を使って対策すべきだということになります。
もちろん、国家総合職以外を目指している受験生でも、本書が全く役に立たないという訳では、決してありません。
ですので、上記の本で不十分だと感じるなら、こちらの本も活用することをおすすめします。
会計学
- 該当する主な職種
- 財務専門官
- 国税専門官
- 都庁(一般方式)
国税専門官や財務専門官といった専門職の公務員を目指しているなら、対策しておきたい科目です。
国税専門官会計学 記述式
公務員試験対策用に書かれている会計学の記述試験対策参考書は、現状、これしかありません。
しかし、この本には、大きなマイナス点があります。それは、出版された年が古く(2002年)、出版以来、一度も改訂されていない点です。
したがって、この本で示される解答例には、法改正に対応していない部分が多々見られ、この本の解答例を丸暗記することは、大変危険です。
ただし、過去問の傾向をつかんだり(国税専門官の過去問が昭和45年分から平成14年分まで収録されています)、解答の文章構成の流れをつかむといった使い方なら、問題ありません。
上記のような使い方をしたり、自分で、法改正部分を適宜、修正できる力や時間があるなら、この本はおすすめです。
その他の科目
専門試験において、記述式の試験が課される公務員試験の種類はそう多くありません。
そして、専門記述試験で課される科目は、これまでに挙げた憲法、民法、行政法、経済学が大部分です。
ですから、いくつかの公務員試験を併願することを考えているならば、憲法、民法、行政法、経済学、会計学の記述試験対策をしておけば、少ない労力で対応する公務員試験の数が多くなり、コストパフォーマンスが高くなります。
もちろん、その他の科目(政治学、行政学、財政学、経営学、社会学)について専門記述試験の課される公務員試験もありますが、それはほとんど例外です。
したがって、公務員試験対策として出版されている専門記述試験対策参考書についても、ほぼ上記の科目のものしかなく、他の科目については、残念ながら、独自に対応するしかありません。
例えば、行政学の専門記述対策としては、択一試験問題の解説からキーワードなどを抜き出して、自分で800字程度の解答を作るといったことが考えられます。
しかし、これは、時間ばかりかかり、労力もかかるので、あまり、おすすめできません。
ただし、行政学などのマイナーな科目は、憲法などと比べると選択する受験生が少ないのも事実で、そういったマイナーな科目で高得点を取ることができれば、他の受験生に大きく差をつけることも可能です。
ですから、そういったマイナー科目が得意であったり、かけられる時間が十分にあるならば、マイナー科目を対策する価値は十分にあると言えます。
そこで、おすすめするのが、以下に紹介する参考書です。
本サイト管理人編集の記述試験対策参考書
ここで挙げる4科目の記述試験対策参考書は、管理人が、平成23年度実施の東京都職員採用試験を受ける際に、専門記述試験対策として、作成したものです。
出題の予想されるテーマについて、それぞれ600字~1,000字程度の解答例を収録しており、財政学、経営学については、解答例中に図表も収録しています。
各解答例の前には、そのテーマのキーワードがまとめてあるので、時間があまりない場合などには、その部分だけ確認するといったような使い方もできます。
現在、AmazonのKindleストアにてそれぞれ販売中で、Kindle Unlimitedの初回30日無料体験を利用することにより無料でお読みいただけます。
終わりに
自分の今の力や、使える時間・労力などをよく見極めたうえで、戦略的に対策科目を決めていって欲しいと思います。