2017年1月11日に、東京都中野区役所に勤務していた元臨時職員の男が逮捕されるという事件が起きました。今回の事件では業務上知り得た個人情報を悪用した疑いが持たれています。


そこで今回は、個人情報に接する機会の多い公務員の仕事について、考えてみたいと思います。

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事件の概要

まずは、事件がどのようなものであったか、概要を紹介します。

元中野区臨時職員の男が、住居侵入と中野区個人情報保護条例違反の疑いで、警視庁に逮捕されました。中野区内で1人暮らしをする複数の女性宅へ侵入し、強制わいせつを繰り返した疑いが持たれています。


また、男はマイナンバーカードに関する業務に従事していたとのことで、区の住民情報端末から女性の住所、氏名、生年月日などの個人情報を閲覧し悪用した疑いも持たれています。

なお、警視庁による自宅の捜索では、女性約50人分の住所や氏名などの個人情報が記録されたパソコンや手書きメモが押収されたとのことです。

中野区の対応

元臨時職員の逮捕を受けて中野区の公式ホームページ上に、”元臨時職員の逮捕について“というページが設けられています(2017年1月12日現在)。

個人情報とは?

次に、個人情報についての情報を整理しておきます。

個人情報の定義

この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう(個人情報の保護に関する法律第2条1項)。


個人情報保護条例と個人情報保護法

意外に思われるかも知れませんが、個人情報の保護については、国による法律よりも地方公共団体による条例の方が先に制定されています。

個人情報保護条例

個人情報保護条例が全国で初めて定められたのは福岡県春日市で、1984年(昭和59年)に制定されました(参考:湯淺墾道 (2014). 個人情報保護法改正の課題 ─地方公共団体の個人情報保護の問題点を中心に─ 情報セキュリティ総合科学 6, 60.)。その後、個人情報保護条例制定の動きが全国の地方公共団体に広まります。

個人情報保護法

個人情報保護条例を制定する動きが全国の自治体に広がったことや、住民基本台帳法の改正によって個人情報を保護する法律の必要性が生じたことから、2003年(平成15年)5月23日に、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が成立しました。


個人情報保護法が成立時した時点では、まだ全ての地方公共団体で個人情報保護条例が制定されていたわけではありませんでしたが、2005年度(平成17年度)末までには、全ての地方公共団体で個人情報保護条例が制定されることとなりました(参考:個人情報の保護に関する条例の制定状況)。


こんな本も読んでおけば、教養論文試験対策に役立つかも知れません。


以下、本の紹介文

すべての関係者がわかりやすいよう、改正ポイントとともに、基礎的な個人情報保護法の解説をすることで、法律の全体像が把握できるように構成。12年ぶりの大改正をフォローした入門書。


中野区の個人情報保護条例

中野区では、中野区個人情報の保護に関する条例(以下、中野区個人情報保護条例)が平成2年3月30日に制定され、平成2年8月1日から施行されています。その後、何度か改正された後、2016年(平成28年)4月1日施行の条例が最新のものとなっています。


今回逮捕された元臨時職員は、この中野区個人情報保護条例に違反した疑いが持たれています。今回の事件では、自宅のパソコンに女性約50人分の個人情報が記録されていたとのことなので、中野区個人情報保護条例の以下の条文に違反、ないし該当するものと考えられます。

  • 第14条の2 個人情報の取扱いに従事する区の職員又は職員であった者は、その業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用してはならない。
  • 第45条 区の職員がその職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画、写真、フィルム又は電磁的記録を収集したときは、1年以下の懲役又は500,000円以下の罰金に処する。

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公務員と個人情報

地方公共団体(特に基礎自治体と呼ばれる、東京都特別区や市区町村)の職員になれば、官房系の部署を除き、ほとんどの部署で住民の個人情報を扱うことになります。個人情報は少しでも扱い方を誤れば、住民の不利益に直結してしまうものです。


今回の中野区の元臨時職員の事件では、悪用することを目的に住民の個人情報を使用し、逮捕されました。


しかし、自分では悪用するつもりがなかったとしても、興味本位で業務上知り得た個人情報を他人に漏らしてしまえば、個人情報保護条例違反となってしまう可能性もあります。


個人情報保護条例に違反した場合には、罰金刑もしくは懲役刑となってしまうこともあります(※罰則規定の有無や内容は地方公共団体によって異なります)ので、個人情報を扱う業務に従事する場合には、十分注意して業務に臨む必要があります。


もちろん、罰則があるから注意するというのではなく、他者の秘密に属する事項を扱っているのだという自覚を常に持っていることが大切です。


個人情報の取り扱いには、くれぐれも注意しましょう。