男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)の成立以来、「男女共同参画社会」の実現に向けて、国による積極的な取組が行われています。
そうした中、平成27年12月25日に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」においては、あらゆる分野における女性の活躍が改めて強調されることとなりました。
「男女共同参画社会」の実現に率先して取り組むべき、国家公務員についても、女性の採用・登用の拡大等に向けた取組が進められています。
そこで、「女性の採用・登用の拡大」がどの程度推進されているのか確かめるために、平成28年度に実施された主な国家公務員試験(行政・事務区分)を対象として、面接試験の倍率に男女で差があるかどうかを調べてみました。
目次(クリックで移動できます)
女性の活躍成果目標
面接試験の倍率について調べる前に、まずは国が掲げる女性の活躍成果目標について確認します。
第二次安倍内閣で最重要課題とされた「女性活躍」について、現状と目標は、次のとおりとなっています(参考:第4次男女共同参画基本計画第2分野、第3分野)。
指導的地位の女性割合 | 現状 | 目標 |
---|---|---|
検察官(検事) | 22.4%(平成27年) | 30%(平成32年) |
国家公務員(本省課室長相当職) | 3.5%(平成27年7月) | 7%(平成32年度末) |
都道府県職員(本庁課長相当職) | 8.5%(平成27年) | 15%(平成32年度末) |
市町村職員(本庁課長相当職) | 14.5%(平成27年) | 20%(平成32年度末) |
地方警察官 | 8.1%(平成27年度) | 10%程度(平成35年) |
民間企業(課長相当職) | 9.2%(平成26年) | 15%(平成32年) |
25歳から44歳までの女性の就業率 | 70.8%(平成26年) | 77%(平成32年) |
面接試験の倍率における男女差
主な国家公務員試験について、面接試験倍率に男女差があるかを調べたところ、国家総合職(大卒)の「政治・国際」区分を除く全ての試験種で面接倍率に顕著な男女差が見られました。
また、面接倍率で男女差が見られた試験種については、国家総合職(大卒)の「法律」区分と「裁判所事務官(総合職、院卒)」を除くすべての試験種で、男性の面接倍率が高くなっていました。
平成28年度国家公務員試験の「行政・事務」区分については、ほぼすべての試験種で男性の面接倍率が高倍率であったと結論付けることができます。
以下、各試験種について、それぞれの面接倍率を紹介します。
国家総合職(大卒)
「政治・国際」区分を除く全ての区分で、面接倍率に顕著な男女差が見られます。男女差について区分ごとに見ると、「法律」区分のみ女性の倍率が高く、その他の区分では、男性が高倍率となっています。
人事院では受験者数を公表していないため、下表の面接試験倍率は、第1次試験合格者数/最終合格者数となっています。また、第2次試験では面接試験のほか、専門記述試験や政策論文試験も課される(足切りあり)ため、純粋に面接試験のみの倍率を表すものではありません。
区分 | 性別 | 面接試験倍率 | 第1次試験合格者数 | 最終合格者数 |
---|---|---|---|---|
政治・国際 | 全体 | 2.02 | 105 | 52 |
男 | 2.03 | 75 | 37 | |
女 | 2.00 | 30 | 15 | |
法律 | 全体 | 1.88 | 1,070 | 569 |
男 | 1.80 | 767 | 426 | |
女 | 2.12 | 303 | 143 | |
経済 | 全体 | 2.12 | 487 | 230 |
男 | 2.18 | 392 | 180 | |
女 | 1.90 | 95 | 50 | |
人間科学 | 全体 | 1.93 | 83 | 43 |
男 | 2.31 | 37 | 16 | |
女 | 1.70 | 46 | 27 |
※倍率は小数第3位を四捨五入
裁判所職員
すべての試験種で、面接試率の男女差が顕著に見られます。
「裁判所事務官(総合職、院卒)」の試験種のみ、女性の面接倍率が顕著に高く、他の全ての試験種で、男性の面接倍率が顕著に高くなっています。
家庭裁判所調査官補(大卒)および裁判所職員(一般職)について、第2次試験では、面接試験のほか、専門記述試験や論文試験も課されている(足切りあり)ため、純粋に面接試験のみの倍率を表すものではありません。
試験種 | 性別 | 面接試験倍率 | 第2次(第3次)試験受験者数 | 最終合格者数 |
---|---|---|---|---|
裁判所事務官(総合職、院卒) | 全体 | 3.89 | 35 | 9 |
男 | 3.43 | 24 | 7 | |
女 | 5.50 | 11 | 2 | |
裁判所事務官(総合職、大卒) | 全体 | 2.90 | 29 | 10 |
男 | 3.14 | 22 | 7 | |
女 | 2.33 | 7 | 3 | |
裁判所事務官(一般職) | 全体 | 3.19 | 2,440 | 765 |
男 | 3.79 | 1,373 | 362 | |
女 | 2.65 | 1,067 | 403 | |
家庭裁判所調査官補(院卒) | 全体 | 4.13 | 62 | 15 |
男 | 5.60 | 28 | 5 | |
女 | 3.40 | 34 | 10 | |
家庭裁判所調査官補(大卒) | 全体 | 4.13 | 186 | 45 |
男 | 4.93 | 74 | 15 | |
女 | 3.73 | 112 | 30 |
※倍率は小数第3位を四捨五入
国家専門職
全ての試験種で面接倍率に顕著な男女差が見られます(男性が高倍率)。
人事院では受験者数を公表していないため、下表の面接試験倍率は、第1次試験合格者数/最終合格者数となっています。また、第2次試験では面接試験のほか、専門記述試験も課される(足切りあり)ため、純粋に面接試験のみの倍率を表すものではありません。
試験種 | 性別 | 面接試験倍率 | 第1次試験合格者数 | 最終合格者数 |
---|---|---|---|---|
財務専門官 | 全体 | 1.95 | 1,029 | 528 |
男 | 2.02 | 728 | 360 | |
女 | 1.79 | 301 | 168 | |
労働基準監督官A | 全体 | 2.37 | 668 | 282 |
男 | 2.63 | 476 | 181 | |
女 | 1.90 | 192 | 101 | |
国税専門官 | 全体 | 1.86 | 5,638 | 3,032 |
男 | 2.04 | 3,842 | 1,884 | |
女 | 1.56 | 1,796 | 1,148 |
※倍率は小数第3位を四捨五入
国家一般職(大卒)
すべての地域区分で面接倍率に明かな男女差が見られます(男性が高倍率)。
人事院では受験者数を公表していないため、下表の面接試験倍率は、第1次試験合格者数/最終合格者数となっています。また、第2次試験では面接試験のほか、論文試験も課される(足切りあり)ため、純粋に面接試験のみの倍率を表すものではありません。
地域区分 | 性別 | 面接試験倍率 | 第1次試験合格者数 | 最終合格者数 |
---|---|---|---|---|
北海道 | 全体 | 1.63 | 565 | 347 |
男 | 1.71 | 411 | 241 | |
女 | 1.45 | 154 | 106 | |
東北 | 全体 | 1.47 | 676 | 461 |
男 | 1.54 | 446 | 289 | |
女 | 1.34 | 230 | 172 | |
関東甲信越 | 全体 | 1.51 | 2,723 | 1,805 |
男 | 1.65 | 1,826 | 1,110 | |
女 | 1.29 | 897 | 695 | |
東海北陸 | 全体 | 1.49 | 1,164 | 782 |
男 | 1.62 | 730 | 452 | |
女 | 1.32 | 434 | 330 | |
近畿 | 全体 | 1.42 | 1,008 | 709 |
男 | 1.55 | 662 | 428 | |
女 | 1.23 | 346 | 281 | |
中国 | 全体 | 1.32 | 515 | 390 |
男 | 1.39 | 326 | 234 | |
女 | 1.21 | 189 | 156 | |
四国 | 全体 | 1.50 | 341 | 227 |
男 | 1.64 | 197 | 120 | |
女 | 1.35 | 144 | 107 | |
九州 | 全体 | 1.46 | 782 | 534 |
男 | 1.54 | 502 | 325 | |
女 | 1.34 | 280 | 209 | |
沖縄 | 全体 | 1.26 | 206 | 164 |
男 | 1.34 | 126 | 94 | |
女 | 1.14 | 80 | 70 |
※倍率は小数第3位を四捨五入