東京都が都庁内保育所「とちょう保育園」を開所―待機児童問題

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2016年9月28日、東京都の小池百合子都知事が、知事就任後初の都議会で所信表明を行いました。


その中で、小池都知事は「保育所などの整備促進」、「人材の確保・定着の支援」、「利用者支援の充実」の3つを柱に1万7,000人分の保育サービスを整備する考えを述べました。


このページでは、小池都知事も重要課題の1つと位置づけている「待機児童問題」について、政府や自治体の取り組みなどを書いていきます。

待機児童とは?

「待機児童」とは、

保育所への入所・利用資格があるにもかかわらず、保育所が不足していたり定員が一杯であるために入所できずに入所を待っている児童のこと

であるとされます。


厚生労働省が行った調査によると、平成28年4月1日現在での待機児童数は、全国で2万3,553人で、前年より386人増加しており、2年連続の増加となったということです。


また、「待機児童」には含まれない「隠れ待機児童」は6万7,354人となり、昨年同時期より8千人あまり増えているとのことです。

隠れ待機児童

厚生労働省の実施する調査では、「地方単独事業を利用している者」、「育児休業中の者」、「特定の保育園等のみ希望している者」、「求職活動を休止している者」については、「待機児童」に含めないこととされています。


また、現在の調査では、「待機児童」の集計方法が、自治体の判断によって異なっており、同じような状況でも、ある自治体では「待機児童」と見なされる一方、他の自治体では「待機児童」とみなされない、といったような問題が生じています。


このように調査上の問題により「待機児童」には含まれないものの、実質的には待機状態となっている児童のことを、いわゆる「隠れ待機児童」といいます。

基準の見直し

厚生労働省では、「隠れ待機児童」の問題などから「待機児童」の数を正確に把握するため、今年度中に全国統一の集計基準を作成することとしています。


平成28年9月15日には、「第1回保育所等利用待機児童数調査に関する検討会」が行われており、新たに作成された基準は来年4月時点の調査から用いられることになります。

問題の原因

「待機児童」問題の主な原因としては、以下のものが挙げられます。

  • 大都市への人口集中
  • 女性の社会進出や不況による共働き家庭の増加
  • ひとり親家庭の増加

全待機児童のうち、約3/4にあたる74.3%(17,501人)の児童が、首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)、近畿圏(京都・大阪・兵庫)の7都府県と他政令指定都市・中核市に集中していることが分かっています(参考:保育所等関連状況取りまとめ(全体版))。


また、政府がすすめる女性の活躍推進や、ひとり親家庭の増加により、保育所のニーズはますます高まってきています。(参考:女性の活躍促進について(内閣府男女共同参画局)ひとり親家庭等の現状について(厚生労働省)

政府の取り組み

政府では、「待機児童解消加速化プラン」として、平成29(2017)年度末までに「待機児童」の解消を目指すとしています。


しかしながら、「待機児童」の定義見直しによって、「隠れ待機児童」が「待機児童」としてカウントされるようになれば、「待機児童」の数は増加するものと考えられます。


そのため、2017年度末までに「待機児童」の解消を達成することは、困難であるとの見方が広がっています。

東京都の取り組み

東京都では、

待機児童解消を進めるためのシンボル的な取組として、都庁内保育所の整備を進めて

おり、平成28年10月1日から「とちょう保育園」の事業が開始します。

「とちょう保育園」

東京都議会議事堂1階に設置され、地域住民や近隣企業の従業員などを対象としています。

設置主体・運営業者

設置主体は「一般財団法人 東京都人材支援事業団」とのことで、運営業者は「社会福祉法人 尚徳福祉会」となっています。

定員

0~2歳児を対象に、48名の定員となっています。
定員の内訳は、下表のとおりです。

対象 定員
地域枠 新宿区民 24名
従業員枠 近隣企業、都職員各2分の1程度 24名

事業内容

主な事業内容は以下のとおりです。

  • 朝7時00分からの開所、夜10時00分までの延長保育
  • モーニングカフェ(早朝登園する親子に朝食を提供)【希望制・有料】
  • てぶらで登園(紙おむつ提供、衣服洗濯等のサービス)【希望制・有料】
  • 登園後の体調不良への対応
  • 誰でも利用可能な一時保育(来庁者の子ども受け入れ 生後6か月から小学校就学前まで対応)【事前登録制・有料】

まとめ

政府・自治体ともに、「待機児童」の解消へ向けて取り組んでいるところですが、「待機児童」の数は、ここ2年増加しており、なかなか進んでいないのが現状のようです。


公務員の志望動機については、「待機児童」の解消というような切り口から、考えてみるのも良いかも知れません。