国家一般職試験等における傾斜配点の考え方

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このページでは、国家公務員の試験で用いられる傾斜配点の正しい考え方について説明します。

国家公務員試験のボーダー確認・予想ツール


傾斜配点とは?

傾斜配点とは、ある試験での得点(以下、素点とする)に特定の比率(傾斜)を掛けることによって得られる点数のことを言います。
たとえば、ある試験での素点が25点で、比率(傾斜)が3であるならば、傾斜配点は75点となります(3倍の傾斜)。

国家公務員試験における傾斜配点

国家公務員(国家総合職、国家専門職、国家一般職)の試験では、各試験種目(基礎能力試験、専門試験、一般論文試験等)について、傾斜配点が用いられています。


たとえば、国家一般職の試験では、基礎能力試験(以下、教養試験)の配点に対して、専門試験の配点比率は2倍の傾斜となっています。

試験種目 基礎能力試験
(多肢選択肢式)
専門試験
(多肢選択式)
一般論文試験 人物試験
配点比率 2/9 4/9 1/9 2/9

参考:合格者の決定方法(人事院:国家公務員試験採用情報NAVI)

国家公務員試験における傾斜配点の考え方

国家一般職試験では、専門試験の配点比率が、教養試験の配点の2倍となっていることから、便宜的に、専門試験の素点を2倍するという考え方が広く用いられています。


しかしながら、国家公務員試験で合格の判定に使用されているのは、「標準点」となっており、実際に専門試験の傾斜配点が教養試験の配点の2倍となることはまれです。


そのため、ボーダーについて、議論する場合、専門試験の得点を2倍にして、教養素点と足し合わせた傾斜点を用いることは、正確性を欠くといえます。


ボーダーについて議論する場合には、教養試験、専門試験ともに素点で考える方が意味のある議論が可能です。

国家公務員試験で用いられている標準点とは?

国家公務員試験で用いられる標準点は下記の式により求められます。

標準点=10×試験種目別の配点比率×{15×〔(素点-平均点)/標準偏差〕+50}

※小数点以下切り捨て


上の式で年度ごとに値が変わるのは、「平均点」と「標準偏差」です(※素点を除く)。


これら2つの変数の組み合わせによって、当然、「標準点」の算出結果は異なってきます。


試験種目によって変数の組み合わせが変わるわけですから、「配点比率」だけをもってして、専門試験の傾斜配点が教養試験の傾斜配点の2倍であるとすることはできない(※国家一般職の場合)のです。

国家一般職試験における傾斜配点の考え方

国家一般職試験における傾斜配点について、具体的な数字を用いて考えてみましょう。
「素点」、「平均点」、「標準偏差」が、それぞれ下の表のとおりである場合を考えます。

項目 教養試験 専門試験
素点 24 24
平均点 19.129 19.321
標準偏差 4.658 6.027

教養試験と専門試験の標準点を計算してみると、それぞれ次のようになります。

教養試験の素点=10×2/9×〔15×{(24-19.129)/4.658}+50〕=145点

 ※小数点以下切り捨て

専門試験の傾斜配点=10×4/9×〔15×{(24-19.321)/6.027}+50〕=273点

 ※小数点以下切り捨て


この例の場合、仮に専門試験の傾斜が2倍だとすると、教養試験と専門試験の素点が等しいため、専門試験の標準点は145×2=290点と計算できます。


しかし、実際の専門試験の標準点は273点(傾斜約1.88倍)であり、便宜的に2倍の傾斜配点で計算した場合とでは17点の誤差が生じています。


専門試験の素点が何点かによって、生じる誤差の値は異なってきますが、少なくともボーダーを議論するうえで17点の誤差は大きすぎるといえるのではないでしょうか。


なお、上の例で用いた各「平均点」と「標準偏差」はそれぞれ、平成28年度試験のものです(参考:平成28年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験) 合格点及び平均点等一覧)。

他の国家公務員試験における傾斜配点の考え方

国家一般職の試験に限らず、国家総合職や国家専門職の試験においても、合格者の決定方法として「標準点」が採用されています。


ここでは、それらの試験の中で、主な試験種別について、それぞれ「標準点」を求める式と「試験種目別の配点比率」を紹介します。

国家総合職(大卒程度)試験の場合

標準点=10×試験種目別の配点比率×{15×〔(素点-平均点)/標準偏差〕+50}

※小数点以下切り捨て

試験種目 基礎能力試験(教養試験) 専門試験(多肢選択式) 専門試験(記述式) 政策論文試験 人物試験
配点比率 2/15 3/15 5/15 2/15 3/15

国税専門官試験の場合

標準点=10×試験種目別の配点比率×{15×〔(素点-平均点)/標準偏差〕+50}

※小数点以下切り捨て

試験種目 基礎能力試験(教養試験) 専門試験(多肢選択式) 専門試験(記述式) 人物試験
配点比率 2/9 3/9 2/9 2/9

財務専門官試験の場合

標準点=10×試験種目別の配点比率×{15×〔(素点-平均点)/標準偏差〕+50}

※小数点以下切り捨て

試験種目 基礎能力試験(教養試験) 専門試験(多肢選択式) 専門試験(記述式) 人物試験
配点比率 2/9 3/9 2/9 2/9

労働基準監督官A試験の場合

標準点=10×試験種目別の配点比率×{15×〔(素点-平均点)/標準偏差〕+50}

※小数点以下切り捨て

試験種目 基礎能力試験(教養試験) 専門試験(多肢選択式) 専門試験(記述式)
配点比率 2/7 3/7 2/7

まとめ

このページでは、国家公務員試験で便宜的に用いられている傾斜配点と、合格者決定方法に用いられている「標準点」との関係について説明しました。


なお、「標準点」を求めるために用いられている標準偏差について詳しく知りたい場合には、下記の本がおすすめです。